大阪地方裁判所 昭和39年(ワ)2326号 判決
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〔判決理由〕一、当事者間に争いのない事実、<証拠>を総合すれば、本件(一)の各不動産は原告梅太郎、本件(二)の土地は原告イトの所有であるところ、原告梅太郎は本件(一)の(3)の建物で奥崎精機工作所との商号の個人企業および尼崎市長洲ヤンマージーゼル神崎工場内で日精金属工業株式会社を経営していたが、昭和三六年夏頃より右事業の経営が悪化し、その営業資金に窮し昭和三六年九月頃その妻奥崎ミツエの遠縁に当る被告に融資方を仰ぐように至つたこと、その際被告は原告梅太郎らより右事業の経営状態を聞き、このままでは債権者らに奥崎家の財産を全部とられてしまうおそれがあるから、ひとまず被告に全部その所有名義を移し替え、一切身軽になつた上で被告より資金援助を受けつつ右事業の再興を図ることが得策である旨原告梅太郎らに示唆し、原告梅太郎はその基本的方針につき同意し、昭和三六年一〇月一〇日その趣旨を記載した承諾書と題する書面(乙第一号証)を原告梅太郎、右ミツエと被告との間に作成し、右合意に基き被告は原告梅太郎に対しその依頼を受けた都度、その必要に応じた金額を別表A欄記載の1乃至3、5乃至12のとおり継続して貸付けたこと、そうして本件(一)の(1)、(2)の土地については原告梅太郎が昭和三六年八月一日訴外片岡克雄より借受けた六〇万円の債務の共同担保として抵当権設定登記および代物弁済予約に基く所有権移転請求権仮登記がなされていたので、被告は昭和三六年一〇月一四日原告梅太郎のために元利金合計六七万五、〇〇〇円(但し、被告は七五万円を主張するが、特別の事情の認められない本件においてはその元本額、期間等に照し、あまりに利息が高率過ぎて右金額は未だ措信できない)を訴外片岡に立替払し、右借入金につき弁済期未到来であつたのに拘らず、右同日右各登記の抹消登記を受けた原告より大阪法務局枚方出張所同日受付第一八三九〇号でもつて売買名下に所有権移転登記を受け、更に昭和三六年一〇月二六日公正証書をもつて大阪府寝屋川市国守町七五四番地所在の原告梅太郎所有の右事業用機械、器具および家財道具一切を原告梅太郎をして占有改定により被告に譲渡させ、また原告梅太郎が昭和三六年六月二六日訴外岡田一雄より借受けた四五万円の債務を担保するため、原告梅太郎は本件(一)の(3)の建物、原告イトは本件(二)の土地につき共同担保として極度額四五万円の根抵当権設定登記および代物弁済予約に基く所有権移転請求権仮登記をなしていたところ、被告は昭和三六年一一月四日原告梅太郎のために元利金合計四八万八、〇二五円を訴外岡田に立替払し、原告らをして右各登記の抹消登記を受けさせた上、本件(一)の(3)の建物については同出張所昭和三六年一一月六日受付第一九八七〇号をもつて原告梅太郎より売買名下に所有権移転登記、本件(二)の土地については原告イトより同出張所同日受付第一九八七一号をもつて債務者原告梅太郎、債権額四二万六、〇〇〇円、弁済期昭和三七年一一月三日とする消費貸借契約についての抵当権設定登記および同日受付第一九八七二号をもつて代物弁済予約を原因とする所有権移転請求権仮登記をそれぞれ受けたこと、原告梅太郎は昭和三六年七月一日訴外羽田万太郎より本件(一)の(4)の土地を代金一四万一、九〇〇円で買受け、未だ残代金二万一、九〇〇円が未払であつたためその旨の所有権移転登記が未了であつたところ、被告は昭和三六年一〇月一八日原告梅太郎のために右残代金を訴外羽田に立替払し、同出張所受付第二一六六五号をもつて訴外羽田より中間省略により直接売買名下に所有権移転登記を受けたこと、そればかりでなく、原告梅太郎はいずれも右借入および立替金の返済として昭和三六年一一月一日頃奥崎精機工作所受取の額面四〇万円の約束手形を被告に交付し、右手形はその支払期日の昭和三七年二月二八日決済され、昭和三六年一一月四日頃訴外日精金属工業株式会社受取の額面四〇万円の約束手形を被告に交付し、右手形はその支払期日の昭和三七年二月五日決済され、昭和三六年一一月六日訴外ヤンマージーゼル株式会社振出の額面三六万円の小切手を被告に交付して支払つたことが認められ、以上に反する証拠は勿論、右認定を格別左右するに足りる証拠も存在しない。
二 そうだとすれば、以上の事実関係の下においては、被告は原告梅太郎の事業を再興させる方策として、債権者らの追求から原告ら所有の財産を守るためにひとまず被告の所有名義に変更させると同時に、原告梅太郎に右事業上の運営資金として現に貸付け又は将来引継ぎ貸付けるであろう債務の弁済を確保する趣旨で、前叙のように本件(一)の各不動産につきそれぞれ売買名下に所有名義を移転し、本件(二)の土地につき代物弁済予約および抵当権設定契約をなし、その旨の登記手続を了したものであり、以上はいずれも各日時を若干異にし且つ法律的形態が同一ではないけれど、実質はいずれも右債務の弁済のための共同担保としての機能を同じくするものであつて、本件(一)(二)の各不動産に対する右売買および代物弁済予約は、特段の事情のない限り(そうして被告の流質の特約がある旨の主張はこれを認めるに足りる証拠がない、被告において弁済期が到来したときは右目的物件を換価処分し、これにより得た金員から右残債権の優先弁済を受け、もし換価金額が元利金額を超えればその超過分はこれを原告梅太郎に返還するものであり、原告梅太郎において被告の右換価処分前はたとえ右弁済期徒過後又は予約完結権行使後であつても、残債務を弁済して右目的物件を取戻すことのできる趣旨の右継続的な借入より生ずる一定の債務を目的とした共同根担保契約の性質を有するものであると解すべきである。
(大隅乙郎)